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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)70号 判決

原告

山崎吉三郎

被告

エスピー販売株式会社

主文

1  特許庁が昭和53年審判第16880号事件について昭和56年1月28日にした審決を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1当事者双方の求めた裁判

原告は主文同旨の判決を求め、被告は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第2請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「自動車等の積載装置を設けた牽引運搬車」とする特許第589955号発明(昭和40年7月17日実用新案として登録出願した後、昭和41年11月15日特許出願に変更し、昭和45年11月20日設定登録をした。)(以下、この発明を「本件特許発明」という。)の特許権者であるところ、被告は、昭和53年12月6日、特許庁に対し、原告を被請求人として本件特許を無効とすることについての審判を請求し、右審判請求は昭和53年審判第16880号事件として審理された結果、昭和56年1月28日「本件特許を無効とする。」との審決がされ、その謄本は、同年2月18日原告に送達された。

2  本件特許発明の要旨

牽引車の中央寄りに車輪軸を装備し、案内杆の後部に案内杆に沿つて移動自在な載架台を装備して構成した牽引車の後部を接地させ、この載架台に被牽引車の一端を載置し、同被牽引車の他の一端と牽引車の後部を接地せしめつつ載架台を中央寄りの車輪軸上辺附近迄移動させることにより牽引車の重量の釣合いを利用して案内杆の傾斜角度を適当に調整出来る様にした自動車等の積載装置を設けた牽引運搬車(別紙図面(1)参照)。

3  審決の理由の要点

1 本件特許発明の要旨は前項記載のとおりである。

2(1) 米国特許第2628733号明細書(特許庁資料館昭和28年6月20日受入)(以下「第1引用例」という。)には、「(a)牽引車(10)の中央寄りに車輪軸(30)を装備し、(b)牽引車の後部に載架台(13)、(14)を装備して構成し、この載架台に被牽引車(V)の一端を載置し、(c)同被牽引車の一端と牽引車の後部を接地せしめつつ被牽引車の前記一端を載架台上において中央寄りの車輪軸上辺まで移動させ、(d)右移動により牽引車の重量の釣合いを利用して牽引車の傾斜角度を適当に調整できるようにした自動車等の積載装置を設けた牽引運搬車」が記載されているものと認められる(別紙図面(2)参照)。

(2) 本件特許発明と第1引用例記載の発明の各牽引運搬車を比較すると、後者における載架台(13)、(14)は運搬車の車体に対して固定されているため、被牽引車の一端を車輪軸上辺まで移動させるには、被牽引車の一端の車輪を載架台上においてそれに沿つて転動させて行うこととなるのに対し、前者は載架台が固定ではなく、被牽引車の一端を載置したまま案内杆に沿つて移動できるようになつている点で構成を異にしている。

(3) しかし、主たる構成及びその作用効果においては両者間に相違なく、載架台を可動とするか、或は固定の載架台上で被牽引車を可動とするかの違いによつては、効果上格別の差異を生じるとは認めがたい。

3 米国特許第2564111号明細書(特許庁資料館昭和26年12月12日受入)(以下「第2引用例」という。)には、本件特許発明における載架台に相当するジヨー(100)とそれを支持する可動フレーム(40)とが、案内杆に相当する固定フレームのレール(12)、(13)に沿つて移動自在に設けられた牽引運搬車が記載されているから(別紙図面(3)参照)、牽引運搬車においては、被牽引車の一端を載置した可動の載架台を案内杆に沿つて移動させる構成が、この出願前すでに公知であつたことが明らかであり、本件特許発明は、固定の載架台を有する第1引用例記載の如き牽引運搬車において、第2引用例記載の如く載架台を可動としたものに相当する。

4  しかしながら、その結果、第1及び第2引用例記載のものの効果の和をこえるなんらかの新しい効果を生じるとも認められないから、本件特許発明は、その出願前に頒布されたこれら刊行物の記載に基づいて、当業者が必要に応じ容易に発明できたものと認めざるを得ない。

5  したがつて、本件特許は特許法29条2項に違反して登録されたものであるから、同法123条1項1号による請求人の主張には理由がある。

4  審決を取消すべき事由

請求の原因3(審決の理由の要点)のうち1、2(2)(但し第1引用例のチヤンネル(13)、(14)の全部分が載架台であることは争う。)は認め、その余は争う。審決は、第1引用例の記載内容を誤認したため、本件特許発明と第1引用例記載の発明の相違点を看過し、両者の作用効果の対比を誤り、かつ第2引用例の記載内容及び載架台の可動についての公知事実を誤認し、その結果本件特許発明が第1及び第2引用例各記載の発明から容易になし得るとの誤つた判断をしたのであるから、取消を免れない。

1 第1引用例の記載内容の誤認(取消事由(1))

(1)  第1引用例についての(a)の認定は誤りである。同引用例には、車輪軸(30)は車台(11)の後端に装備されている旨記載されており、これによれば、同引用例記載の発明は牽引車の中央寄りに車輪軸(10)が装備されている本件特許発明とその構成を異にする。

(2)  第1引用例についての(b)の認定のうち、牽引車(10)の後部に載架台(13)、(14)が装備されている旨記載されているとの部分は誤りである。同引用例にはチヤンネル(13)、(14)においてくさび(65)と前端部(15)との部分が載架台であり、くさび(65)と後端部(16)との間は渡り板部である旨記載されている。これによれば、同引用例記載の発明は載架台が車輪軸(30)より前方に位置する点において、案内杆(1)の後部に載架台(4)を装備する本件特許発明とはその構成を異にしている。

(3)  第1引用例についての(c)の認定は誤りである。同引用例には、前記(2)に述べたチヤンネル(13)、(14)のうち渡り板部の後端部(16)を接地させる旨記載されており、これによれば、同引用例記載の発明は、牽引車の後部を接地させる本件特許発明とはその構成を異にする。

(4)  第1引用例についての(d)の認定は誤りである。同引用例には、被牽引車(V)の一端をチヤンネル(13)、(14)のうち前記(2)の渡り板部の後端(16)を接地させ、この渡り板部を利用して被牽引車(V)を車輪軸(30)の上辺より前方に位置するチヤンネル(13)、(14)のうち前記(2)の載架台に転動させる旨が記載されており、これによれば、同引用例記載の発明は、被牽引車の一端を車輪軸上辺附近まで移動させることにより牽引車の重量の釣合いを利用して牽引車の傾斜角度を適当に調整する本件特許発明とはその構成を異にする。

2 本件特許発明と第1引用例記載の発明との作用効果の相違の看過(取消事由(2))

右両発明間に効果上格別の差異が認められないとの審決の判断は誤つている。

本件特許発明においては、載架台(4)を案内杆(1)の後部に、車輪軸(10)をその中央寄りに位置させ、案内杆(1)の後部を接地させて載架台(4)を被牽引車の下部奥深く潜入させることによつて、同車を移動又は持上げ等をすることなくそのまま同車のバンパー以外の頑丈な個所(例えば車輪軸)を載架台(4)上に支持することができる。そして、載架台(4)を案内杆(1)に沿いその中央寄りの車輪軸(10)上辺付近まで移動させることにより、牽引車の重量の釣合いを利用して案内杆(1)の傾斜角度を適当に調整することができる。このように本件特許発明によれば、被牽引車が正常な状態にある場合はもとより、後記のように故障等の異常な状態にある場合でも、無傷のままでその載架台(4)への支持及び牽引車への積載作業を1人で安全かつ短時間のうちに行うことができる。

一方、第1引用例記載の発明においては、載架台が固定であるため、被牽引車を積載するには固定の渡り板上でその車輪を転動させなければならないが、被牽引車がサイドブレーキがかかつた状態、変速ギヤが入つた状態、事故等で車輪が回転不能、偏向曲折又は外れた状態にあるときは、車輪の転動が困難か不能であるため、積載作業は非常に困難であり、ときには不能である。また、車輪が正常な状態にある被牽引車でも転動中渡り板からわきへそれないようにハンドルで進行方向を修正しつつ積載する必要がある。

このように、載架台を可動とするか、固定の渡り板上で被牽引車を可動とするかによつて、作用効果上格別の差異が生ずることは明らかである。

3 第2引用例の記載内容の誤認及びそれに基づく公知事実の誤認(取消事由(3))

(1)  審決の第2引用例の認定は誤つている。第2引用例には、可動フレーム(40)を後方に延出してポンプハンドル(170)を操作してジヤツキ腕(122)、(124)を起立させ、この状態でレール(12)、(13)を備える固定フレーム(10)(牽引車に相当する)を後退させることによつて、可動フレーム(40)を固定フレーム上に積載し、可動フレーム(40)の後端の受け台(94)を固定フレーム(10)の後端の車輪軸(28)上に位置せしめる構成が記載されている。第2引用例記載の発明による被牽引車の具体的な積載方法は別紙図面(4)に示すとおりである。まず同図面①が示すように、本件特許発明の載架台(4)に相当するジヨー(100)を被牽引車の下側の1部(例えば車輪軸)の真下に位置するよう牽引運搬車を移動し、接地金具(126)を接地させ、次に同図面②が示すように、ジヤツキの腕(122)を屈折させて可動フレーム(40)をその後端がその前端より高くなるまで持上げる。この時被牽引車の車輪軸がジヨー(100)に載置され、接地金具(126)が被牽引車の重量で地面に食い込んだ状態になる。そして、同図面③に示すように、固定フレーム(10)が接続する牽引用トレーラーを所定の位置まで後退させると、それにつれて固定フレーム(10)及びその下の車輪が後退する。この時、ジヨー(100)、ジヤツキの腕(122)、可動フレーム(40)及び被牽引車は移動しない。最後に同図面④が示すように、ジヤツキの腕(122)を上方へ戻し、可動フレーム(40)に装備したローラー(90)が固定フレーム(10)に乗り、積載作業が終る。

(2)  このように、第2引用例では載架台に相当するジヨー(100)は接地金具(126)が地面に食い込んでいるため、それ自体固定フレーム(10)のレール(12)(13)に沿つて移動することはできないのである。

(3)  したがつて、審決が、被牽引車の一端を載置した可動の載架台を案内杆に沿つて移動させる構成の牽引運搬車が本件出願前公知であつたと判断したことは誤りである。

4 以上述べたところによれば、本件特許発明が固定の載架台を有する第1引用例記載の如き牽引運搬車において第2引用例記載の如く載架台を可動とするものに相当するとして、その進歩性を否定した審決の判断が誤りであることは明らかである。

第3請求の原因の認否及び被告の主張

1  請求の原因1ないし3の事実は認めるが、同4は争う。

2  主張

1 取消事由(1)について

審決には、第1引用例の記載内容の認定につき原告主張のような誤りはない。

2 取消事由(2)について

本件特許発明と第1引用例記載の発明の相違点は、前者が「被牽引車の載架台を案内杆に対し摺動自在に取付け、被牽引車の一端と載架台とを同時に車輪軸上に移動する」構成であるのに対し、後者が「載架台に相当する車輪受け溝上を被牽引車の一端(左右輪)を転動又は滑動して車輪軸上に移動する」構成であることにある。右のような構成上の相違の結果、第1引用例記載の発明では、原告主張のように被牽引車の車輪軸が回転不能等の故障の場合に車輪を動かすことに多少の困難があり得ることは否定し得ない。しかし、後に述べるように、第2引用例記載の「受け台をメインフレームに摺動自在に装備した構造」を第1引用例記載の「車輪受け溝」に代えれば、本件特許発明と全く同じ構成、効果が得られるのであるから、この点に関する原告の主張は理由がない。

3  取消事由(3)について

審決には、第2引用例の記載内容の認定につき原告主張のような誤りはない。

第2引用例記載のメインフレーム(固定フレーム(10))は本件特許発明の案内杆(1)に相当し、受け台(ジヨー(100))は本件特許発明の載架台(4)に相当する。ただ、第2引用例記載の発明では、1対のレール杆でメインフレームを構成し、このメインフレームに移動フレーム(可動フレーム(40))をローラー等で摺動自在に支持し、移動フレームに支持あごを有する受け台を取付けている。したがつて、同引用例には受け台が移動フレームを介してメインフレームに摺動自在に装備した構成が開示されているということができるから、牽引運搬車において被牽引車の一端を載置した可動の載架台を案内杆に沿つて移動させる構成が本件出願前公知であつたとの審決の認定は正しい。

4  以上述べたところによれば、本件特許発明は第1引用例記載の固定の載架台を第2引用例記載の可動の載架台に置換えたにすぎす、その進歩性を否定した審決は正当である。

第4証拠関係

本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

1  請求の原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。

2  取消事由(1)の(1)、(2)、(3)について

成立に争いのない甲第5号証によれば、第1引用例には、台車(11)と車輪支持枠(12)よりなる牽引用ドリー(10)において、台車(11)は、車輪支持枠(12)の下方に回動自在に固着されて車輪支持枠(12)のほぼ中央部分に台車(11)の後部を形成する車輪軸(30)を装備し、車輪支持枠(12)は、その左右両側に、中央付近にくさび(65)を備えたチヤンネル(13)、(14)を装備し、このチヤンネル(13)、(14)の後端部(16)から被牽引車(V)の一端である車輪を載置し、他の一端の車輪とチヤンネル(13)、(14)の後端部(16)を接地せしめつつ、被牽引車(V)の前記一端である車輪を、チヤンネル(13)(14)上を、車輪軸(30)の上辺付近にあるくさび(65)を越えその前端部(15)付近まで移動させることにより、被牽引車(V)の重量を利用して後部に傾斜した車輪支持枠(12)全体と、台車(11)の前部にあつて牽引ドリー(10)とその牽引用トラクター(T)を連結する牽引棒(35)とを水平にするようにした自動車等の積載装置を設けた牽引運搬車が記載されていることが認められる。

この記載によれば、牽引用ドリー(10)が本件特許発明の牽引車に相当し、車輪軸(30)は台車(11)の一部を形成するものの、被牽引車(V)をチヤンネル(13)(14)により載置する車輪支持枠(12)のほぼ中央部分に装備されているから、右車輪軸の位置は本件発明同様牽引車の中央寄りにあるということができる(別紙図面(2)第1、第2、第5、第6図)。また、被牽引車(V)の車輪は車輪支持枠(12)の左右両側のチヤンネル(13)(14)の後端部(16)からくさび(65)を越え前端部(15)近くまで転動するのであるから、後端部(16)からくさび(65)までの部分を含めチヤンネル(13)(14)全体が載架台であると認められるのであり、そうであれば、第1引用例においても本件特許発明同様牽引車の後部に載架台を備えているものということができる。更に、第1引用例では被牽引車の積載に当たり、チヤンネル(13)(14)の後端部(16)を接地させるのであるが、右の後端部(16)は本件特許発明の牽引車の後部に相当するものと認めることができる。

以上によれば、第1引用例に関する(a)、(b)、(c)の審決の認定に誤りはなく、この点についての原告の主張は理由がない。

そこで、取消事由(1)の(4)についての判断はしばらく措き、右認定の事実に基づいて取消事由(2)について判断する。

3  取消事由(2)について

第1引用例記載の発明においては、載架台が牽引ドリー(牽引車)に固定されているため、被牽引車の一端を車輪軸上辺まで移動させるには、被牽引車の一端の車輪を載架台上においてそれに沿つて転動させて行うこととなるのに対し、本件特許発明においては、載架台が固定ではなく、被牽引車の一端を載置したまま案内杆に沿つて移動できるようになつている点において両発明が構成を異にしていることは当事者間に争いがない(なお、原告は第1引用例においてはチヤンネル(13)、(14)のうちくさび(65)より前方部分が載架台である旨主張するが、チヤンネル(13)、(14)全体を載架台と認めるべきであることは既に述べたとおりである。)。

このような構成上の差によつてもたらされる作用効果の相違について検討すると、載架台が固定されている第1引用例記載の発明では、前掲甲第5号証によれば、被牽引車の積載のための移動は牽引ドリー(10)の前方に接続された牽引用トラクター(T)に設置されたウインチ(W)により行われるのであるが、被牽引車のサイドブレーキがかけられたままであつたり、車輪が斜め方向のままハンドルロツクされていたり、エンジンが故障していたりして、被牽引車の車輪の回転が不能か不完全である場合には、その車輪を載架台(13)、(14)上で転動させて移動させることに種々の困難が伴うことが予想され、また、移動の際被牽引車の車輪を損傷するおそれがある。

これに対し、本件特許発明では、前掲甲第3号証によれば、被牽引車の前部車軸又は後部車軸にロープをかけ回して載架台(4)上に載置したままこれを案内杆に沿つて適宜の位置まで移動すればよいことが認められるから、被牽引車の載置に当つて、被牽引車の車輪自体を転動させる必要はなく、車輪の回転が不能又は不完全な場合であつても、第1引用例記載の発明におけるような作業の困難性や車輪損傷のおそれはないし、右発明に比し、作業時間も短縮され、作業内容によつては1人で行うことも可能であるということができる。

このように、載架台に関する構成を異にすることによつて、本件特許発明は第1引用例記載の発明に比し、格別の効果を奏するものと認めることができるから、この点について、両発明の主たる構成及び作用効果に相違なく、載架台を可動とするか否かによつて効果上格別の差異が生じないとの審決の判断は誤りである。

4  取消事由(3)について

成立に争いのない甲第4号証によれば、第2引用例の記載内容及び被牽引車の積載方法は原告が請求の原因4、3、(1)において主張するとおりである(但し、レール(12)、(13)を有する固定フレーム(10)は本件特許発明の案内杆(1)に相当する。)と認めることができる。

これによれば、本件特許発明の載架台(4)に相当するジヨー(100)及び可動フレーム(40)は被牽引車を持上げた後静止し、次いで本件特許発明の案内杆(1)に相当する固定フレーム(10)のレール(12)、(14)が右可動フレーム(40)及びジヨー(100)の下に移動するのであつて、審決が認定するようにジヨー(100)及び可動フレーム(40)が固定フレーム(10)のレール(12)、(14)に沿つて移動するものではないから、審決は、この点において第2引用例の記載を誤認しており、更に右誤認を前提とする「牽引運搬車においては、被牽引車の一端を載置した可動の載架台を案内杆に沿つて移動させる構成がこの出願前にすでに公知であつた」との認定もまた誤りである。

5  審決は以上のような本件特許発明と第1引用例記載の発明の作用効果の差を看過し、第2引用例の記載及び公知事実を誤認し、かかる看過、誤認に基づき本件特許発明が第1及び第2引用例記載の発明から容易になし得るとの判断をしたのであるから、右看過、誤認がその結論に影響を及ぼすことは明らかであるということができる。したがつて、審決は取消を免れない。

6  よつて、その余の点を判断するまでもなく、原告の本訴請求を正当として認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(瀧川叡一 松野嘉貞 牧野利秋)

〈以下省略〉

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